今回は「予備知識無しでもよく分かる経済解説」シリーズをお送りします。
前回記事(【予備知識無しでもよく分かる経済解説10】プラザ合意によるバブルの発生と崩壊3)の続きです。
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金融不安
バブル崩壊によって、かつての名門金融機関が次々と破綻していきました。
1997年11月には、北海道拓殖銀行と山一証券が破綻しました。
1998年10月には、日本長期信用銀行が破綻しました。
1998年12月には、日本債券信用銀行が破綻しました。
どれも大手金融機関で、潰れるなどと誰も考えなかった金融機関ばかりです。
世の中には、「次につぶれる銀行は、どこだ!?」という不安感が蔓延しました。
この頃の金融機関に対する不安感が高まった現象を「金融不安」とよびます。
1999年、政府は世の中の金融不安を鎮めるためと、銀行の財務健全性を高めるために、公的資金を銀行資本へ注入することを決定しました。
前回の記事「貸し渋り・貸し剥がし」の銀行の例でいうと、下の図の「自己資本」の部分に政府のお金を注入することで、銀行の自己資本比率を高めたのです。
借方 貸方
貸付金 38億円
土地 49億円 預金 80億円
自己資本 7億円
合計 87億円 合計 87億円
どうして、政府が銀行へ公的資金を注入しなければならなかったのでしょうか。それは「金融不安」が蔓延していたために、銀行へ出資しようという人がいなかったためです。
銀行へ出資して、もしその銀行がつぶれてしまったら、出資したお金は戻ってきません。そうすると大変な損失になってしまいます。「次のどの銀行がつぶれるか分からない」という不安感で満ちていた頃に、あえて銀行へ出資しようとする人はいなかったのです。
自己資本を増やせない場合、銀行に残された選択肢は企業へ貸しているお金を返してもらう「貸し剥がし」をしたり、持っている土地や株を売って総資産を減らすことだけです。
多くの銀行がそのようなことをしてしまうと、貸し剥がしを受けた企業がお金に困ります。売られた土地や株の値段はさらに下落してしまいます。
この悪循環を避けるため、政府が銀行へ出資したのです。
政府の公的資金注入によって金融機関の破綻はおさまり、金融不安はだんだんと落ち着きを見せてきました。
【解説】
銀行への公的資金の注入について
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不良債権を抱えたり、保有する土地の価格が下落して損失を抱え自己資本が減っているのに、銀行が自分の力で自己資本を増やすことができない場合、政府が公的資金を銀行の自己資本へ注入することがある。
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後日談(日本と世界のこれから)
これまで見てきたように、プラザ合意以降、日本は次のような険しい道のりを歩んできました。
プラザ合意
↓
円高不況
↓
不況対策のための日本銀行の利下げ
↓
低金利で借金して土地を買う企業が続出
↓
土地バブル発生
↓
金利引き上げ、不動産融資総量規制
↓
バブル崩壊
↓
土地価格下落、不良債権増加
↓
銀行の貸し渋り、貸し剥がし
↓
企業の倒産、リストラ
↓
失業者増加、消費者不安増大
↓
消費低下、さらなる景気悪化
↓
大手金融機関の破綻 金融不安
この後も、2000年に景気が上向いたかと思うと「ITバブルの崩壊」で2001年にはまた景気が悪くなってしまいました。
その後、2002年から2007年までは主にアメリカへの輸出が増加したおかげで景気が回復し、「いざなみ景気」という長期間の景気回復局面がありました。
しかし、アメリカで「サブプライムローンバブル」が崩壊した2008年、日本の景気も急速に悪化しました。
2002年から2007年の好景気は、アメリカの「サブプライムローンバブル」によるかりそめのものだったのです。
しかも2002年から2007年の景気回復局面では、日本全体の従業員の給料が増えなかったため、「実感なき回復」とよばれました。
1991年にバブルが崩壊してからずっと日本の経済は苦しい状態が続いています。
1991年からの20年間を「失われた20年」とよぶ人もいます。
日本はずっとこのままな不景気なままなのでしょうか。
私はそうは思いません。日本経済が再び活気を取り戻し一人当たりGDPを成長させていくことは可能だと考えます。
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