梅棹 忠夫「知的生産の技術」



情報を集め、アイデアを出し、文章などに形でアウトプットする作業を「知的生産」と呼びます。この言葉は名著「知的生産の技術 」から生まれました。1969年初版という古典です。

ノートやカードの書き方、新聞記事をスクラップする方法、垂直ファイルを使った書類の整理法、読書記録カードと読書カードの書き方、手紙・原稿の書き方が分かりやすく解説してあります。

本書は、高校自体の梅棹氏がダ・ヴィンチの手帳を知り、我も天才ならんとして真似をする所から始まります。レオナルド・ダ・ヴィンチには、手帳になんでもかんでもかきこむという癖がありました。町をあるいていて出会った人の顔の特徴や品物の値段など、なんの役にたちそうもないことまで、こくめいに書き込んだといいます。

大学生時代の梅棹氏は、野外研究旅行中に書いた数十冊のノートの処理に途方にくれた経験から、カードの活用を試行錯誤します。その後梅棹氏は、ノートを一切使わず、全てをカードに書くスタイルを確立します。常に50枚のB6サイズの情報カード、いわゆる京大型カードを持ち歩き、発想、仕事の経過、読書記録、会議の議事、日記。全てを書くのです。

本書の一番の特徴は、何でもかんでもカードに書くことを主張しているところです。ノートに書くと、書いた内容は時系列に並び、うごかせません。カードに書けば、全ての情報が同じ大きさのフォーマットに規格が統一されます。並べ替えたり、机の上に広げて一覧することもできます。10年前の思考を記したカードと、今日書いたカードを結びつけることもできます。カードの山を分類することで、一冊の本にまとめることもできます。

本書が提唱する、カードを書く際の原則はつぎのとおりです。これらは、カードでなく携帯端末などデジタルデバイスで情報整理する場合にも守るべき普遍的な原則です。

常にもちあるく
アイデアはいつどこで生まれるか分かりません。生まれたアイデアはすぐに忘れてしまいます。常に記録できる体制を整えておけば、生まれたアイデアを失うことはありません。
梅棹氏はプラスチック板2枚で50枚のカードをはさみ、ゴムバンドでとめて持ち歩いていました。

カード1枚に1項目だけ書く
「1枚に1項目」という原則はとても重要です。1枚に複数項目かいてしまうと、あとから整理分類する際に、どこにも分類することができなくなります。複数項目にわたるばあいは、カードを分けて書きます。

忘れるためにかく
カードというと暗記用カードを連想しますが、このカードは忘れてもよいように書きます。キーワードだけ、不完全な文章だけ、では後から読んで意味がわからなくなります。誰が読んでも内容を理解できるように完全な文書で書きます。

分類は重要で無い
書いたカードをどう分類するかは重要でありません。書いたカードを無理に分類する必要はありません。「未分類」というカテゴリに格納しておけば十分です。分類よりも、繰り返しカードをくって読み返し、発想をえることが大事です。


実際には、私はカードを使っていません。本書を読んだ多くの方々もカードは使っていないようです。本書は「では自分はどのような方法で知的生産しようか」と思考の出発点を与えてくれるとことに価値があります。

知的生産に携わる方必読の書だと思います。


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