北杜夫「どくとるマンボウ青春記」を高校時代に読んでおけばと後悔



北杜夫氏の「どくとるマンボウ青春記」は、高校時代に読みたかった本です。せめて大学時代に読みたかった。読んでいれば学生時代の過ごし方やその後の人生は、まったくちがったものになっただろうと思います。


青春は、犯罪を侵さない程度のメチャクチャをやる時期だよなあ、と思いました。あとから思い出すと恥ずかしくて叫びたくなるような、バカなことをやったりしゃべったり考えたりする時期が、青春時代です。

北杜夫氏は高校から大学時代に書いた日記や詩や雑文を書き留めたノートを全部保管していて、その一部を本書で披露しています。これがおもしろいのです。私も学生時代、もんもんとした思考をノートに書いていましたが、そのあまりの恥ずかしさのため、書いたそばから破いて捨ててしまいました。今思えばもったいないことをしました。今はもう一回あのノートを読んでみたい気がします。今手元にあったとしても、やっぱり恥ずかしくて処分してしまったでしょうが。

青春時代は、ありあまるエネルギーを、とにもかくにも発散しなければなりません。だから全くなんの意味もない無駄なことを一所懸命やることになります。北杜夫氏の青春時代は、若者のデタラメを、教師や大人が叱りながらも優しく許容していて、若者が健全にデタラメできた時代です。若い頃は効率とか有効性など考えず、無駄なことを非行率に、思うがままにやってみる時期だと思います。

現代では、小中学生のころから、効率的に情報を処理し有利な学校へ入ることが要求されます。効率的な情報処理をうまくこなす子は優等生としてかわいがられる一方、効率社会に適応できない子は社会からドロップアウトしていきます。たとえ優等生として階段をのぼれたとしても、ふとしたきっかけでカルト宗教にはまってしまったりします。こうしたカルト信者やニートの若者は、効率重視社会が生み出した副産物です。若者が無駄なことをやったり考えたりする自由を許すだけの余裕が社会にあれば、若者は無駄なことをいろいろやったうえで、自分なりの大人へのなりかたを見つけるのではないでしょうか。

堅苦しい世代論を書いてしまいましたが、この本は笑いどころ満載の、一流の娯楽作品です。こむずかしいことをかんがえず、時間を無駄にするくらいの気楽な気持ちで読むことをおすすめします。


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