続ける力をつけるために必要な一つのこと


ふり返ってみると、なにか一つのことに集中して持続的にとりくんで成果を出した経験は、かぞえるくらいしかありません。英語学習とMBA、そして某専門分野の勉強くらいです。これらは自分としてはかなり頑張ってやりとおしたことです。だけどほかには大したことをやっていません。


仕事は大学卒業以来ずっと続けていますが、だからといって毎日モーレツに仕事し続けてきたわけではありません。英語力とMBAと某専門知識のお釣りで仕事してきたような感じもします。人生は、2,3回だけなにかを頑張れば、しばらくはそのお釣りでなんとかなるようです。

持続力は努力で身に付くようなものでなくて、その時の自分と運命的にフィットする何かと出会ったときに、自然と発揮されるもののような気がします。

ここまで書いて思い出しましたが、村上春樹氏著「走ることについて語るときに僕の語ること」には、全く逆の主張が書かれています。少し長いですが、引用します。


 才能の次に、小説家にとって何が重要な資質かと問われれば、迷うことなく集中力をあげる。自分の持っている限られた量の才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める能力。これがなければ、大事なことは何も達成できない。そしてこの力を有効に用いれば、才能の不足や偏在をある程度補うことができる。僕は普段、一日に三時間か四時間、朝のうちに集中して仕事をする。机に向かって、自分の書いているものだけに意識を傾倒する。ほかには何も考えない。ほかには何も見ない。思うのだが、たとえ豊かな才能があったとしても、いくら頭の中に小説的アイデアが充ち満ちていたとしても、もし(たとえば)虫歯がひどく痛み続けていたら、その作家はたぶん何もかけないのではないか。集中力が、激しい痛みによって阻害されるからだ。集中力がなければ何も達成できないと言うのは、そういう意味合いにおいてである。
 集中力の次に必要なものは持続力だ。一日に三時間か四時間、意識を集中して執筆できたとしても、一週間続けたら疲れ果ててしまいましたというのでは、長い作品は書けない。日々の集中を、半年も一年も二年も継続して維持できる力が、小説家にはーー少なくとも長編小説を書くことを志す作家にはーー求められる。呼吸法にたとえてみよう。集中することがただじっと深く息を詰める作業であるとするとすれば、持続することは息を詰めながら、それと同時に、静かにゆっくりと呼吸していくコツを覚える作業である。その両方の呼吸のバランスがとれていないと、長年にわたってプロとして小説を書き続けることはむずかしい。呼吸を止めつつ、呼吸を続けること。
 このような能力(集中力と持続力)はありがたいことに才能の場合と違って、トレーニングによって後天的に獲得し、その資質を向上させていくことができる。毎日机の前に座り、意識を一点に注ぎ込む訓練を続けていれば、集中力と持続力は自然に身についてくる。これは前に書いた筋肉の調教作業に似ている。日々休まず書き続け、意識を集中して仕事をすることが、自分という人間にとって必要なことなのだという情報を身体システムに継続して送り込み、しっかりと覚え込ませるわけだ。そして少しずつその限界値を押し上げていく。気づかれない程度にわずかずつ、その目盛りをこっそりと移動させていく。これは日々ジョギングを続けることによって、筋肉を強化し、ランナーとしての体型を作り上げていくのと同じ種類の作業である。刺激し、持続する。刺激し、持続する。この作業にはもちろん我慢が必要である。しかしそれだけの見返りはある。

村上氏はトレーニングによって集中力と持続力を身につけることができるといっていますが、それは村上氏が、小説という自分にパーフェクトにフィットするものと出会ったからではないか、と私は思うのです。つまり、持続力を身につけるようがんばるよりもまず、続けたくて仕方がなくなるような、自分にパーフェクトにフィットするものと出会うことが先決ということです。

では、私たちがパーフェクトにフィットしたものと出会うにはどうしたらよいのでしょうか。とにかくいろんなものに手を出してみる、というのが遠回りでも確実な方法ではないかと思います。筋トレでも英語の勉強でも習い事でもブログでも何でもやってみればよいのです。一度挫折してやめてしまっても、また気が向いたら再開してもよいのです。出会いにはタイミングがあります。私が英語学習を何度もはじめては挫折しての繰り返しを何年も続けたのですが、あるきっかけで毎日猛烈に勉強するようになりました。起きてる間中、とにかく英語を勉強したくてしようがなかったのです。まさに集中力と持続力が服を着て歩いているような状態でした。私の持続力が高まったからではありません。私自身の人格や能力が変わったわけではないのですが、なぜか英語学習を続けることが出来たのです。

続ける力がないと自信をなくしたり嘆いたりしている方がいるかもしれませんが、自分を責める必要はありません。自分にフィットするものと出会うまで、いろいろなことに手を出しては三日坊主、という試行錯誤をつづければよいだけです。


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