外資系企業とデール・カーネギー

 私は日系企業を経て、外資系企業に転職しました。

国内系企業と外資系企業では、会社の雰囲気、周りにいる人間の持つ雰囲気はぜんぜん違います。

特に上司の部下に対する接し方がぜんぜん違います。

国内系企業では、今で言うところのパワハラ系上司が多くいました。威張っていて、「部下は自分の命令に従って当たり前」という雰囲気。部下を呼ぶときは呼び捨ても普通です。

外資系では、上司は部下に対してフレンドリーです。基本的に部下に対して話しかけるときも敬語を使い、「○○さん」と、さん付けで呼ぶのが当たり前です。これは上司が外国人であっても日本人であっても同じです。

なぜこのような違いあるのでしょうか。

国内系企業は基本的には終身雇用を前提としています。また年功序列制も根強く残っています。終身の雇用制度の下、定年まで同じ会社にいることが当たり前で、かつ部下と上司の関係が逆転する可能性が極めて低い環境では、上司は安心して部下に威張ることができるのでしょう。

一方、外資系企業では、上司と部下の関係は固定的ではありません。パフォーマンス重視の会社であれば、部下が上司を追い抜いて出世することも珍しくありません。また、部下はいつやめてしまうかわかりません。優秀な部下であればなおさらです。また、部下がクライアント企業に転職した場合は、あっという間に元部下は顧客になってしまいます。

こういった中では、上司はあまり部下に対して居丈高に振舞わず、丁寧に扱っておく方がリスクが少ないのでしょう。とても合理的な行動だと思います。

しかし、上司が部下に対しフレンドリーなのは、部下と立場が逆転した時のためのリスクヘッジだけが理由ではないように、私は思います。

ポジティブな考え方をし、部下をフレンドリーに扱って部下を率いていくことができるか否か、というのは、会社が人に部門を任せるときの重要な判断基準になっている、というのがもっとも大きな理由のように感じます。

本国の本社から社長や役員が、時々日本支社に来ますが、彼らには共通点があります。

日本人社員と話すときは、とてもフレンドリーで快活に話しかけてくるのです。また会話の中でネガティブな表現はめったに使いません。ポジティブな内容の会話をポジティブな表現を使って話し、笑顔を絶やしません。

人の話を聞くときは、「しっかりと聞いているよ」という顔と態度をとりながら聞き、話に対してポジティブな感想を返してきます。

まるで、デール・カーネギーの「人を動かす」を頭の中に叩き込んで、そのまま日々実践しているかのようです。

彼らは、生まれもってデール・カーネギーの本の内容を頭に入れて生まれてきたわけではありません。

ビジネスの世界で成功するために、必要な素養だから、それを学び実践しているのでしょう。

同じだけの実績を出す人なら、しかめっ面で人に接するよりも、明るく笑顔で部下や顧客を大事にしながら率いていく人の方が出世するからこそ、そのような振る舞いを意図的に身につけているように感じます。

私にとっては、意図的にポジティブで明るい雰囲気が、わざとらしく感じられる時があり、そういう白々しさは好きではないのですが、そんなことを気にする私はまだ修行が足りないのでしょう。

本国本社から担当者レベルの人が来て、その人が、しかめっ面で愛想の悪い人だったりすると、彼が自分の本性を見せてくれているような気がしてかえって安心したりします。

「人間的に正直な人だな、でも出世しないだろうな。」と、感じたりします。

今思えば、国内系企業で威張っていた上司達は、自分の人間性を正直に見せてくれていた、愛すべき人たちだったのかもしれません。

外資系企業の出世している上司たちの顔には、いつも笑顔が張り付いていますが、その笑顔の向こう側にある本性は推し量るしかありません。

最初は嘘でもよいから、「ポジティブ」、「部下にもポライト」、「人間大好き!」、というオーラ、立ち居振る舞いを身に着けることが、外資系企業で生きていくうえでは有効に機能するであろうことは、疑う余地はありません。

さて、私も「人を動かす」を読み返すとするかな。。。


英語版は"How to Win Friends and Influence People"というタイトルです。私は英語版を時々読み返しています。


高校時代に初めて日本語版を読みましたが、この本は何度も読み返す価値があると思います。

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