カルト的人気を誇る奇書「肩をすくめるアトラス」とは

 WSJから"'Atlas Shrugged': From Fiction to Fact in 52 Years Article"というタイトルの興味深いコラムを見つけました。一部抜粋して紹介します。

Some years ago when I worked at the libertarian Cato Institute, we used to label any new hire who had not yet read "Atlas Shrugged" a "virgin." Being conversant in Ayn Rand's classic novel about the economic carnage caused by big government run amok was practically a job requirement. If only "Atlas" were required reading for every member of Congress and political appointee in the Obama administration. I'm confident that we'd get out of the current financial mess a lot faster.


(主要語彙)

Libertarian:自由主義者

conversant:精通{せいつう}している

carnage:大虐殺

run amok:見境をなくす、逆上して暴れる

appointee:被任命者

required reading:必読書、指定図書

mess:混乱


(和訳)

数年前、私が自由主義者カトー協会で働いていた頃、「肩をすくめたアトラス」を読んでいない新人社員には「処女」とレッテルを貼ることにしていたものだ。見境をなくした大きな政府によって引き起こされた経済的大虐殺を描いた、アイン・ランド氏の古典小説に精通することが、事実上の職務資格だったのだ。もし、「アトラス」が、議員とオバマ政権メンバーに任命される人に対する必読書となりさえすれば、現在の金融システムの混乱からもっと早く抜け出すことができるだろう。


恥ずかしながら、私はこの「肩をすくめるアトラス」という小説のことも、アイン・ランド氏という小説家も、今日このコラムを読むまで知りませんでした。アイン・ランド氏(1905-82)はロシアからアメリカに亡命した小説家で、自由競争・市場重視型の資本主義論を展開し、70年代以降のアメリカ政財界に影響を与えた人だそうです。

「肩をすくめるアトラス」は、1957年にアメリカで出版された1000ページを超える大著で、アメリカでは「聖書の次に人々に影響を与えた本」として評価されています。小説としてのストーリーもさることながら、その物語を通した著者のメッセージが強烈で、カルト信者的ファンを多く獲得しているようです。

私はこの、自由主義(リバタリアリズム)の考え方が好きです。「自分自身の力で頑張って自分自身の人生を切り開いてやる!」「ビッグになってやる!」という生き方をしたいと考えていますし、そのように生きる人を見るのが好きです。そんな人がたくさんいてこそ社会の文化や経済は活性化し、より豊かで楽しい社会が生れます。

リバタリアリズムの逆にあるのは、社会福祉・弱者救済を重視する考え方です。この考え方は私は好きません。国民に最低限の生活を保障する仕組みは必要だと思います。しかし、はじめから福祉重視を打ち出す社会では、「自分で頑張らずに、国に保護してもらおう」と考える人が増えてしまいます。頑張る人を励まし成功を支援し経済を成長させて始めて、弱者を救済する財源が生れるのです。

「肩をすくめるアトラス」の概要を読んで、村上龍氏の「愛と幻想のファシズム」を思い出しました。「そうだ、俺は鈴原冬二だ!才能あふれる俺の成功をこの腐った社会が邪魔しているのだ!!」と鼻息を荒立てながら、就職活動に没頭してたものでした。

「肩をすくめるアトラス」についてのAmazonの紹介文やレビューを読んでみると、なかなか面白そうです。寺島実郎氏がカバーにコメントを書いている点も私個人としてポジティブ材料です。読んでみようと思います。


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