ジョン・K・ガルブレイス「大暴落1929」 を読みました。
1929年の米国株式市場の大暴落を書き綴った本です。暴落前までの株価上昇はどのようにして起こったか、その後の大暴落時に、政府、FRB、銀行、投資家は何をしたのかが、克明に書き記されてあります。
本の帯に、「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著」とあるが、繰り返し読まれるのも理解できます。なぜなら、この本で述べられていることは、何度も何度も繰り返されているからです。
バブルが形成される過程では、何らかの理由でまず投資ブームが起こり、レバレッジ効果で莫大な収益をあげる「天才」が現れます。そして「天才」の真似をしようと個人投資家もこぞって信用買いをはじめます。
一部の経済学者等は株式市場が過熱しすぎている事にうすうす気づきますが、相場の盛り上がりに水をさすような意見は非難されるか無視されます。政府や中央銀行は、自分がバブルを崩壊させる犯人にはなりたくないため、自然にバブルが崩壊するのを待ちます。
そしていつかバブルは崩壊します。レバレッジ効果で利益を得ていた人々が、株価下落によって追証を迫られ、現金を差し出さざるを得なくなります。現金が底をつくと信用買いのポジション解消を余儀なくされ、株の売却によってさらに株価が下落します。銀行は投資家への融資を引き上げ、体力を失った銀行は企業融資も引き上げます。これにより企業倒産が続出し、賃金低下、失業者増加を引き起こします。そして消費者の支出が減少し、企業収益低下、税収減少と、実体経済へと負のスパイラルは波及していくのです。
このプロセスは、2007~2008年に起きた世界的株価暴落と全く同じです。
1929年は、株価をリアルタイムに見れず、今自分の株価がいくらなのか分からない恐怖感が売りを増幅させました。今回はCDS、CDO、MBS、ABCP等等の新金融商品の流動性が枯渇し、適正な時価が分からなくなってしまったことが、売りを増幅させました。
また、1929年はレバレッジをかけた投資信託が一瞬で紙くずになったのに対し、今回はレバレッジをかけたCDO、特にサブプライムローンを参照資産とするCDOが紙くずとなりました。どちらも、高収益を謳い文句に広く投資家に売られた「革命的な新しい金融商品」である点は同じです。CDOの方が、世界中の投資家に行き渡り、被害を地球全体に拡散させた分たちが悪いといえるかもしれません。
1929年の大暴落の後は10年間不況が続いたようです。それでいくと、今回の不況は今から10年間つづくということになります。
しかし、私はそんなに長く不況が続くことはないと考えていません。
1929年には預金保険の制度がなく、倒産した銀行に預金していた人は財産を失ってしまいました。今は全先進国に預金保険の制度があります。各国政府の、金融システム回復に対するコミットメントは高いと考えて差し支えありません。グローバルに相互につながった経済は、リスクが拡散するという問題もありますが、問題解決に向けてグローバルに協力できるというメリットもあります。
最後に、私がこの本の中で最も印象に残った一節を紹介します。
あの年(1929年)から学ぶべき教訓は多いが、その一つは、いまとなってはじつに明白である。将来は予測可能だと思い上がった人ほど悲惨な末路をたどった、ということだ。
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