「僕の老後は君たちにかかってるからな。がんばってくれよ。」
新卒で就職した会社の新入社員歓迎会で、こう言われました。
彼は定年退職間近で、退職金と企業年金での悠々自適の老後が待っていました。「企業年金が維持されるためには、現役社員が稼がないといけない」と、彼はいいたかったのです。
当時は、この言葉が自分にとってどんな意味を持つのか深く考えませんでした。が、その後身にしみて、この言葉の重みを実感せざるを得ませんでした。
「30歳で年収一千万を軽く越えるよ」と言われたから、という不純な動機で会社を選んだのですが、年収はすこしずつしかあがっていきません。なんか変だな、話が違うな、と同期入社の友人とも話していました。
先輩社員の「おまえたちの世代は大変だな。俺の世代は同期も多くて楽だし年収も多い。今の若手は一人あたりの仕事量は多いのに給料は安い。」という言葉も気になりました。
私が入社した会社は業績が頭打ちの状態にありました。これまでのように人件費を増やすことはできません。かといって、給与や企業年金受給額を「減らす」という発想を会社は持っていません。今までもらっていた金額を減らされるとなれば、社員や労働組合、OBの反発は避けられないからです。
「減らす」のをあきらめる代わりに、会社は「昇給幅」を抑えました。これには中高年の社員もブツブツいっていましたが、いちばんダメージが大きかったのが若手社員です。
最初は収入が低くてもその後ウナギ昇りに昇給して30歳で一千万を越える、と信じて入社したのに、昇給はウナギ昇りどころか低空飛行です。しかも新規採用抑制のせいで同期や後輩の人数は少なく、仕事の負担は膨大です。こうした若手の犠牲によって、中高年社員の高給とOBの潤沢な企業年金はかろうじて維持されているのです。
しかも会社は、売上の先細りをカバーするために、社員に自社製品の購入の奨励を拡大しました。各部署・各支店に自社製品購入の目標額が割り当てられ、キャンペーン推進担当者が任命されました。各部署で一番の若手が担当者となりました。先輩社員や上司に頭を下げ、なんとか自社製品を買ってもらうようにお願いするのですが、先輩社員たちは過去にたくさんの自社製品を買わされているのです。ノルマを達成できない分は、若手が自社製品を買って穴埋めすることになりました。
バーター取引も会社政策として行われました。自社製品を取引先企業の社員が買い、そのかわり私たちは取引先企業の製品を買うのです。ほしくもない車やスーツ、高級食材を買わされました。携帯電話の機種も自分で選べませんでした。
増えない収入、膨大な仕事、半強制的な自社製品購入やバーター取引。若手は徐々に会社を見限り、離れていきました。
それでも会社は考えを改めようとしません。給与制度や年金制度を司る役員や部長は、もうすぐ定年退職する身です。自分の退職金や年金を減らすような意志決定をするわけがありません。若手がやめれば人件費削減になるからです(だったら採用するなよ)。
以上が飽和市場で収益を細らせている企業の典型的な内情です。これらの記述は各種報道・資料などをもとにしたフィクションです。特定の団体や個人と一切関係ありません。
大企業とよばれ知名度が高くても、にっちもさっちもいかなくなっている会社はたくさんあります。一方で、今後の成長が期待できる会社もたくさん存在するのも事実です。これから成長できる企業を探す方法をひとつ紹介します。
それは、日本株アクティブファンドが保有する銘柄を調べる、という方法です。外資企業への就職を考えている人は外国株アクティブファンドを調べます。特に、グロース運用とよばれる、企業の成長性を分析して投資するスタイルのファンドをしらべるのがよいでしょう。割安な株に投資するバリュー運用のファンドは、「ダメ企業だけど株価はやすい」という銘柄にも投資します。株式投資の参考にはなりますが、就職先や転職先を調べるための参考にはなりません。
大型株グロースファンドより、小型株グロース株ファンドのほうが、一般にはしられていないけどこれから大きく成長する企業を知ることができます。
グロース運用をおこなうファンドマネージャーやアナリストは、日々膨大な数の会社を分析し、これはと思う銘柄を厳選して投資します。その銘柄選択の結果を無料でみることができるのですから、利用しない手はありません。ファンドの全ての保有銘柄は、運用報告書に公開されています。
小型株を重視したグロース運用ファンドで有名なのはレオスの「ひふみ投信」です。一般には知られていない成長企業がポートフォリオに組み入れられています。
若者は、飽和企業の年金制度を維持するための犠牲になるのでなく、企業の成長に貢献するような仕事をすべきだと思います。もし今の会社で行き詰まっていたら、成長企業を調べてみることをおすすめします。
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