橘玲「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」に対するささやかな反論


橘玲氏のブログを見て驚きました。「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」を紹介するエントリーのコメント欄が荒れていたからです(今はコメント欄が閉鎖されている模様です)。

発端は「残酷」にある次の主張です。「人の能力は生まれつき遺伝でほぼ決定している。勝間和代などの自己啓発本を読んでがんばるのは無駄。」

この主張に対し、「そんなことはない。たとえば、東大に合格するのに才能など必要ない。正しい方法で勉強すれば凡人でも東大合格は可能」という反論がブログのコメント欄に書き込まれました。

これにさらに反論し、「苦労してやっと東大に入れる奴はいる。真の勝者は生まれつき頭が良く、勉強しなくても東大に入れる奴」という反論が発生。

「そもそも東大に行けば幸せなのか?」と論点がずれた人もいて(いや、これが最もまともな意見かもしれません)、プチ荒れ状態となりました。

これらの反論の欠点は、橘氏の本書による意図を正確に理解していない点にあります。コメントは主張の本筋ではない部分、議論の途中段階の部分にツッコミを入れているに過ぎません。

私は、もっと本質的な部分で本書に対する反論を持っています。
 
本書のメッセージは、「全員が同じ目標に向かってがんばっても、夢が叶うのは一部の人。そして誰が一部の人になるかは才能ですでに決定されている。大半の人は、競争の激しい分野で一番を目指そうとして疲弊するだけ。それならば、自分の得意なことを伸ばし、それを役立てることで必要十分な程度のお金を得つつ、他者から承認される場所や役割を社会のどこかで見つけることができれば、それで幸福といえるのではないか」ということです。

私は、このメッセージはとても魅力的に感じると同時に、現実的には実行するのはかなり難しいんじゃないか、と思いました。

橘氏は、経済や金融、税制の知識のほか、脳神経学、行動経済学などを駆使して、読者に生き方を提案するという、同氏にしかできない手法を生みだし、作家としての地位を築きました。橘氏と同じように、何らかの分野でポジションを確立することが誰にでもできるのだというのが本書のメッセージですが、これはそんなに簡単なことではありません。

実際には、ニッチ市場でのオンリーワンを目指すよりも、皆が目指すサラリーマンになり、その中で上位50%より上程度の位置を維持する方が、一般人にとってははるかに簡単です。

就職し、IT(エクセル、ワード、パワポなど)、英語、会計など社会人としての基礎スキルを身につける。仕事や自己啓発を通して自分の好きな仕事、得意な仕事をみつけたら、そこに一点集中し専門能力を身につける。専門家としての能力を磨いたあともおごり高ぶらず、社会人としてのマナーを守り、「一緒に仕事しやすい人だ」と周りから思われようにする。

この程度のことをきちんとしていれば、外資系企業であっても、そう簡単にリストラされることはありません。この程度のことができてない人が、どんな組織でも10%以上を占めています。リストラされるのはこのような下位10%であって、あなたではありません。仮に運悪く、会社の倒産などで職を失っても、あなたを必要とする組織は必ずあります。

奇をてらったキャリアプランをひねり出す必要はない、社会人として普通にがんばれば良いだけだ、というのが、今の若者に対する私の正直な助言です。

こんな常識的な意見を本にしても売れないでしょうけど。売れないのと、助言として役に立つのは違うでしょう。私は、商材としての価値はないが現実的で実際に役に立つ情報やアイデアを、このブログで書いていきたいと思います。

橘玲氏の著作は知的刺激を与えてくれ、とてもおもしろいです。私がここで書いたことを思いついたのも、橘氏の本を読んだおかげです。これからも橘氏の本を読み続けます。

残念なのは、橘氏が意図的に読者を煽っている部分にマトモに反応する人がいること、そしてそのような人の存在をネットによって知ってしまうことです。

だったらネットを見るなといわれてしまいそうです。それはそうなのですが。。。

本書はアマゾンでは中古本が1円から変えます。

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