「これから10年長期投資のロードマップ」を読みました

※以下の記事は2007年、15年前に書いたものです。岡崎氏の景気と金融市場の循環論は今でも通用しています。驚きです。


 最近読んだ本は、岡崎良介氏「これから10年 長期投資のロードマップ」です。

岡崎氏はフィスコ・アセットマネジメントのCIOをされている方です。こういう立派な肩書きを持つ方は、相場予測などをやってリスクをとることをしないものですが、岡崎氏は、過去のデータを下にした循環論を用いて、大胆に相場予測をすることで有名です。

岡崎氏の今後の市場予測を胡散臭いと感じる向きもあるでしょうが、自分自身の市場見通しを得るうえで、どのような経済指標や統計データに注目しておけばよいかが分かりとても参考になります。

以下、私の読書メモです。


日本の景気は2~5年拡大し、上がりきったところでそこからストンと半分くらいの時間で落ちていく。

日本の株価が景気に先行するのは25分の23の確率

景気拡大期には株価は景気に7.5ヶ月先行して上昇する。景気後退期には株価は景気に6.2ヶ月先行して下落する。

■株価

株価が景気に遅行したのは3回。

オイルショック期における山から谷、谷から山へ転換するところ。今回の平成大不況の回復期。

株価の上昇率=スピード×時間

株価の年率換算上昇率=株価の上昇スピード

GDP成長率が高いときは株価のスピードも高い。

景気拡大期間が長くなるほど、株価のスピードが加速する。

本来2002年1月から、その7~8ヶ月前のどこかで反転し上昇するはずの株価が、その後1年3ヶ月も低迷したのは人災。構造改革の名の下に強引に進められた不良債権処理、デフレ対策の名の下に行われた日本銀行の量的緩和政策。性急な不良債権処理は、これに苦しむ企業と銀行の株を押しつぶし、量的緩和は、債券を買っておけば間違いなく儲かるという期待を市場に生み出し、株から債券へのシフトを促した。


■金利

2回の景気循環に対して1回の金利の循環。

長期国債が登場したのは1972年。第1回10年国債は、7年国債の償還期限を10年に延長することから始まった。

金利は株と異なり景気に遅行する。

平成大不況には、景気と株の二循環に対して金利が一循環という関係が壊され、景気と株が三循環する間ずっと債券にお金が流れ込む時代が続いた。本来なら、景気が谷をつけた1999年1月の少し後に、金利は谷をつけるはずだった。実際ははてしなく下がり続け、谷を付けたの2003年の5月と4年4ヶ月も遅れ、その間にもう一回景気と株が循環した。

1999年2月日本銀行が第一回目のゼロ金利政策を開始。2000年8月にいったん解除。2001年3月に再度ゼロ金利政策開始。速水前総裁の時代。

日本の金利は上昇するときには、ただ単に時間によってのみ上昇幅が決定される。そのスピードは年間約1%。4年間景気が拡大し金利が上昇するとすると4%上昇する。金利上昇が金融政策と関係ないとことで決まるという事実は皮肉なようで深い意味がありそう。


■為替

為替は米国の金融政策によって決まる。ドルは米国金融政策に約1年遅行する。

市場は金融政策が変わったかどうかを見極めるために、1年以上の時間をかける忍耐力を持っている。身の回りのモノ、サービスの値段といった実体経済の調整速度が遅いのも原因の一つ。

一度だけ、金融政策に3年3ヶ月遅れて山をつけたところがある。これは1998年7月。この時期榊原英資財務官が3年連続して強引なドル買い介入を行い、無理やり円ドルを押し下げた。この介入のせいでドルの上昇が続いた。


■株価、金利、為替、すべては米国経済が動かしている

株価、金利は日本の景気が動かす。為替は米国金融政策が動かす。では日本の景気、米国金融政策は何が動かすのか?米国の景気が動かしている。

米国経済は、日本よりも1年5ヶ月長い5年7ヶ月が一循環。拡大期間が日本よりも長く、それでいて後退期間が日本よりも短い。

日本の景気は米国に1年送れて後退局面から抜け出す。

日本の景気は米国に6ヶ月遅れて折り返す。米国の拡大期間が長く、日本の拡大期間が短いため、景気後退への転換のラグは小さい。

日本の株価は回復するときは7~8ヶ月、後退するときは6ヶ月景気に先行する。これは米国の景気が原因。日本の株式市場は、日本の景気が米国の景気に遅行することを知っており、これをいち早く察知するために米国経済をしっかりと観察し、米国景気の循環を見ながら値段の上げ下げを決定している。これが全ての基点。

それだけではない。米国の景気は米国の金融政策を決定する。景気が行き過ぎた状態になり、過熱してくれば金融政策は引き締めを開始する。逆に景気が後退し、所得が大幅に低下する事態になれば、金融政策は緩和を開始する。そしてこの金融政策の変化はドル全体に影響を及ぼし、為替市場を動かす。

ところが、金利が引き上げられ続けると、やがて米国景気が後退するとわかっているにもかかわらず、金利の引き締めがおわってからもまだ、ドルが1年以上にもわたり強くなってします。そうなると、この間に日本の輸出企業が円安のおかげで、利益を増大させ、この力で日本の景気はしぶとく拡大を続け、なかなかピークをつけない。それでも最後は日本の景気も米国の景気後退に遅れて後退局面に向かうが、このような為替を解して起こる利益の移転により、日米の転換点はズレる。

米国が金融緩和を行うときは逆のプロセスが起こる。景気を回復させようと米国連銀は金利を下げるが、利下げ局面が終わっても1年以上遅れてドルが下落し続けてしまうため、この間に日本の輸出企業の利益が減少し、これが原因で日本の景気回復は遅れる。


■何によって米国景気は後退するか

米国経済は周辺国の影響を受けない。米国経済を殺すのは常に米国金利。金利を上げすぎで(引き締めすぎて)、オーバーキルさせたときに景気は後退する。

政策金利(FFレート)=名目GDP+4%が分水嶺。

深刻な景気後退が始まる前には必ず、FFレートが米国の名目成長率を4%以上も上回る、異常なほどの高水準に引き上げられている。このようなオーバーキル状態の後、7ヶ月以内に米国景気は後退へ向かう。

例:実質成長4%、物価上昇4%という状態が続き、FFレートを7%あたりまで引き上げた後、突然実質GDPがマイナスになり、名目GDPが3%程度に下がり、FFレートとの差が5%近くになる。


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