オバマ大統領異例の寄稿

※当記事は2009年2月11日、リーマンショック後の不況のさなかに作成したものです。


 オバマ米国大統領が、ワシントンポスト紙に寄稿した文章を紹介します。

By Barack Obama

Thursday, February 5, 2009; A17

By now, it's clear to everyone that we have inherited an economic crisis as deep and dire as any since the days of the Great Depression. Millions of jobs that Americans relied on just a year ago are gone; millions more of the nest eggs families worked so hard to build have vanished. People everywhere are worried about what tomorrow will bring.


(語彙)

Inherit:引き継ぐ

Dire:悲惨な。極度の。ひどい。

Great Depression:大恐慌(1929年)

Nest eggs :将来のための貯金、貯蓄

Vanish:消える


(和訳)

我々は、大恐慌以来の深刻で悲惨な経済危機を引き継いだということは、今では誰の目にも明らかである。米国民がほんの一年前までは頼りにしていた何百万もの雇用はなくなってしまった。これまで多大な努力によって築いてきた貯蓄は消え去ってしまった。世界いたるところの人々は明日には何が起きるのかと不安になっている。


(コメント)

これはオバマ米国大統領がワシントンポストに寄稿した文章の第一段落です。日本メディアでは、このオバマ大統領寄稿文の中の、「500万人が失業する」「景気回復には数年かかる」等、悲観的な見通しを述べた部分がクローズアップされています。しかし、オバマ大統領のこの寄稿文の目的は、悲観的見通しを述べることではなく、直面する危機を克服し米国を適切な方向へ導くアクションが必要だと訴えることにあります。

具体的には、健康保険カバー率の上昇(日本と違い米国は全国民が健康保険でカバーされているわけではなく、医療費の上昇が深刻な問題になっています)、省エネルギー化、教育の充実ー特に数学と理科ー、そして雇用創出にとりくむべきだと主張しています。「減税すれば景気は回復する」という意見に対しては、オバマ大統領は、「破綻した理論であり我々を危機に導くものだ」と批判しています。

米国大統領が一般メディアに寄稿するというのは極めて異例のことです。米国議会では景気対策法案が議論されています。この法案の廃案や予算規模の縮小を回避するために、オバマ大統領は直接国民へ理解を求める方法を選んだのでしょう。

もし私が米国民だったら、将来の税負担増加につながる財政出動拡大よりも減税の方を好みます。でも減税されたとしたら、減税分は消費に使わずに貯金に回しちゃうと思います。そうするとやはり景気回復のためには財政政策の方が効果が大きいのでしょうか?このテーマは経済学者の間でも議論になるくらい難しい問題です。

しかし、中途半端な対処療法は問題を長引かせるだけというのが日本の「失われた10年」の教訓ですので、オバマ大統領には毅然とした取り組みを期待します。


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